生殖医療科

医学的適応による妊孕性温存療法と温存後生殖補助医療について

近年、悪性腫瘍をはじめとする原疾患への治療(抗がん剤や放射線)成績が向上し、がんが完治する人々増えてきています。しかし、抗がん剤や放射線は、癌細胞も殺しますが、これらに感受性の高い生殖細胞(精子や卵子)にも障害を与えてしまいます。その結果、治療後に卵巣や睾丸機能の廃絶や高度の障害によって、妊孕能を喪失(子供を作ることができない)する若者が存在することが問題となっています。この問題に対して生殖医療専門医は、治療前の卵子や精子を採取し未受精の状態で凍結保存する技術を既に有しています。但し、卵子を取り出すまでには排卵誘発剤を用いて卵巣を刺激する時間(2週間程度)や、妊娠を望む場合に体外受精(顕微授精)が必要となってきます。さらに現在、凍結卵子を用いた体外受精による児産出率は 10% 程度と新鮮卵子を用いた体外受精に比べると劣る現状です。一方、既婚者では体外受精まで行い、胚(受精卵)の状態で凍結・保存した方が妊娠率は向上します。35才までの卵子で良好胚が得られれば、その妊娠率は 30% 以上が期待できます。上記の治療対象は、原則として40才以下とします。

卵巣凍結保存・自家移植では、すぐに卵巣を取り出し、悪性腫瘍に対する治療を開始できるメリットがあります。さらに自然排卵・自然妊娠の可能性も残ります。海外では、2004年以降すでに200 以上の生産例があると推測されています。国内では200例以上の凍結が行われていますが、妊娠例は数例のみです。この治療は、未だ臨床研究的な位置づけの治療なのです。 これまでの成績を見てみると、卵巣機能の回復は90%以上で認められていますが、短期で機能停止を来す例や再移植を行った症例も報告されています。移植あたりの妊娠率は約20%ですが、流産も多いのが現状です。対象とする女性の年齢は、海外での報告も参考に原則15歳以上、35歳以下とします。また、自家移植の年齢は45歳未満とします。

上記の医療は令和3年度より国主導の研究促進事業に位置付けられました。今後は、「日本・がん生殖医療登録システム(JOFR)」に登録・参加した患者さんで凍結時の年齢が43歳未満の者のみが助成金付与の対象者となります。また、将来凍結したものを用いて温存療法後生殖補助医療を受ける場合にも、妻の年齢が43歳未満でJOFRに継続的な報告をおこなっていないと、助成金付与の対象から除外されます。

当院は、妊孕性温存および温存後生殖補助医療の両方に関する指定施設です。

これらの治療にかかる費用のおおよその目安

  1. 卵巣刺激から採卵、未受精卵凍結保存にかかる費用:20~25万円
    → 体外受精の場合は5万円プラス、顕微授精の場合はさらに5万円かかります
  2. 卵巣組織凍結保存に係る費用:約60万円
    → 腹腔鏡下手術(5日間入院)及び凍結キット料金を含みます
  3. 凍結卵巣組織の融解・自家移植術にかかる費用:約60万円
  4. 精子保存にかかる費用:一律3万円
    → 検査・分注・凍結料を含みます

※ 凍結保存した未受精卵子、胚(受精卵)、卵巣組織、精子の保持は1年契約とし、1年毎に保存延長の希望を確認します。
 ※ 年間の保存料は、数に関係なく毎年1万円です。
 ※ 本項目の金額は全て税別です。

温存後生殖補助医療に係る費用

  1. 体外受精 (+胚移植):30~40万円
  2. 顕微授精:5万円
  3. 胚凍結:5万円
  4. 凍結胚融解・移植:10∼20万円

妊孕性温存および温存後生殖補助医療に対する助成は、下記の通りです。

小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業参加申請について

小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業指定医療機関

 

対象となる治療 1回あたりの
助成上限額
胚(受精卵)凍結に係る治療 35万円
未受精卵子凍結に係る治療 20万円
卵巣組織凍結に係る治療
(組織の再移植を含む)
40万円
精子凍結に係る治療 2万5千円
精巣内精子採取術による
精子凍結に係る治療
35万円
*43歳未満で2回まで

 

申請書各種

対象となる治療 1回あたりの
助成上限額
凍結した胚(受精卵)を用いた生殖補助医療 10万円
凍結した未受精卵子を用いた生殖補助医療 25万円
凍結した卵巣組織再移植後の生殖補助医療 30万円*3,4
凍結した精子を用いた生殖補助医療 30万円*3,4
*3: 採卵したが卵が得られない、又は良い卵が得られず中止した場合 10万円。
*4:卵胞が発達しない、排卵後、又は体調不良で採卵を中止した場合は対象外。
40歳未満は通算6回(40歳以上は通算3回)までとする。

 

申請書各種

無料不妊専門相談

当院では、無料の不妊専門相談事業を平成9年より行っています。必要であれば、臨床心理士や産婦人科専門医もお答えします。また専門の臨床遺伝カウンセラー、生殖心理カウンセラーもおりますので、ご希望の方はどうぞご相談ください。

妊孕性温存について

当院では、小児、思春期、若年がん患者の妊孕性温存を実施しています。希望される方は、以下の方法で予約をして下さい。

1 妊孕性温存を希望される方へ

希望される方は、現在受診されている病院の主治医の先生にご相談ください。主治医の先生からの所定の紹介状を当院地域医療連携室にFAXで送付することにより予約ができます(予約枠が空いていれば、ご希望に添うことが可能です)

2 当院に患者さんを御紹介頂く主治医の先生へ

ご紹介にあたっては、下の「紹介状(診療情報提供書)①妊孕性温存希望 ②治療後妊娠希望 ③原疾患担当医による説明文書」をダウンロードし、必要事項をご記入頂き、当院地域医療連携室に紹介患者予約申込みと共にFAX(0835-22-5184)にて送付をお願い致します。検査をご希望の方への説明には、下のPDF「医学的適応による精子、未受精卵子、受精卵及び卵巣組織の凍結・保存に関する説明」をご活用くださいますよう宜しくお願い致します。

診療情報提供書の様式
  1. 妊孕性温存希望(XLSX, 23.2 KB)
  2. 治療後妊娠希望(XLSX, 23.6 KB)
  3. 原疾患担当医による説明文書(DOCX,14.6KB)  

紹介患者予約申込書(申込み診療科は生殖医療科を選択してください)

説明文PDF

「医学的適応による精子、未受精卵子、受精卵及び卵巣組織の凍結・保存に関する説明」(PDF,127KB)

山口県がん・生殖医療ネットワーク(YOF-net:ヨフネット)について

県内の若年がん患者さんに対して、治療前に、妊孕性低下に関する十分な情報提供、カウンセリング、妊孕性温存療法の適応やその方法を円滑かつ迅速に提供することを目的として、平成30年11月1日に「山口県がん・生殖医療ネットワーク」が設立されました。略称は「YOF-net(ヨフネット):Yamaguchi Oncofertility Network」と言います。  県内のがん治療医及び生殖医療専門医の連携・情報交換が容易となり、妊孕性温存療法の医療がスムーズに行える体制が充実し、県民の皆様への良質な生殖医療の提供が期待されます。

ヨフネット(YOF-net:ヨフネット)利用のご案内

小児、思春期・若年がん患者の妊孕性温存

関係学会等のリンク先、及びパンフレット

○「小児・若年がん長期生存者に対する妊孕性のエビデンスと生殖医療ネットワーク構築に関する研究」:http://www.j‐sfp.org/ped/

・参考となるパンフレット等

パンフレット(将来お子さんを希望される男性患者さんへ)

(男性用)

 

パンフレット(将来の出産を希望される女性患者さんへ)

(女性用)

 

パンフレット(乳がん治療にあたり将来の出産をご希望の患者さんへ)

(乳がん)

 

○特定非営利活動法人 日本がん・生殖医療学会:http://www.j-sfp.org/
 ・地域連携を行っている地域の紹介、卵子や卵巣組織凍結保存を実施する施設の一覧等

○一般社団法人 日本生殖医学会:http://www.jsrm.or.jp/
 ・乳がん患者の卵子凍結保存を受け入れている施設の一覧等

○公益社団法人 日本産科婦人科学会:http://www.jsog.or.jp/
 ・卵子、胚、卵巣組織の凍結保存に関する登録施設の一覧等

 

問い合わせ先

山口県立総合医療センター
 患者支援連携センター
 地域医療連携室・医療相談室・がん相談支援センター
 TEL:0835-22-5355 FAX:0835-22-5184