泌尿器科
主な対象疾患
悪性疾患
腎細胞がん
腎臓は、背骨の両側のちょうど腰の高さのところに左右1つずつあるソラマメのような形をした臓器です。腎細胞癌は腎臓内の尿細管という細い管より発生したがんです。中高年以降に多く発症し、男性にやや多い傾向です。古典的な症状としては、血尿・腹部腫瘤・疼痛ですが最近は、超音波検査などで偶然発見されることがあります。治療の原則は、外科的摘除が中心です。
手術療法
腹腔鏡下もしくは開腹で腎周囲脂肪組織を含め摘除を行います。
近年、偶然発見される早期のがんも多くなり,腎機能低下を最小限にするため、一部だけを切除する腎部分切除術が行われるようになりました。
薬物療法
以前は、免疫療法としてインターフェロンが使われていましたが、2008年より分子標的薬にその座を明け渡しました。分子標的薬が効かなくなった方には2017年に免疫チェックポイント阻害薬が使用できるようになり、劇的な効果を示すことがあります。
腎盂・尿管癌
腎で作られた尿が流れこむ腎盂とその尿を膀胱に運ぶ尿管に発生するがんです。症状は、肉眼的血尿やがんのある側のお腹の痛み。治療は、外科的摘除が中心です。
手術療法
転移がない場合は、病気のある側の腎および尿管すべて(尿管口までを含めて)を摘出する腎尿管全摘除術を腹腔鏡下併用もしくは開腹にて行います。
薬物療法
転移を有する場合は、抗癌化学療法としてGC療法やMVAC療法が行われています。2017年12月末に、腎細胞がん同様、免疫チェックポイント阻害薬が使用できるようになり、治療効果が期待されています。
膀胱癌
膀胱がんは、喫煙者は、2−3倍リスクが高くなるとされています。症状は、肉眼的血尿ですが、頻尿や排尿痛といった膀胱炎のような症状のみの場合もあり注意が必要です。
がんが表面だけか?膀胱深く入り込んでいるか?(表在性、浸潤性)によって治療法は大きく異なります。表在性がんは、内視鏡手術。浸潤がんは一般に膀胱全摘となりますが、尿の出るところを変えること(尿路変向術)が必要です。
手術療法
表在がんの場合は、経尿道的腫瘍切除(尿道から内視鏡を挿入し腫瘍を切除)します。浸潤がんは、膀胱を全て取り除きます。膀胱がなくなるわけですから、尿路変向術として回腸導管*や自然排尿型新膀胱*が必要となります。
薬物療法
表在がんの場合、術後に高頻度に再発するため、膀胱内に抗癌剤やBCG注入を行うことがあります。転移を有する場合は、抗癌化学療法としてGC療法やMVAC療法が行われています。抗癌化学療法が効かなくなった時に、2017年12月末に腎細胞がん同様、免疫チェックポイント阻害薬が使用できるようになり、期待されています。
放射線療法
全身状態不良などのため膀胱全摘できない場合に、抗癌化学療法と併用して行います。また、がんの進行に伴う高度血尿やがん性疼痛のコントロールのため姑息的に行うことがあります。
- 回腸導管*
約20cm の長さの回腸を切り離し、導管(腸のパイプ)を作成します。左右の尿管を導管につなぎ、導管のもう一方の端をお腹の片側(通常は右側)に出しストーマを作成します。 - 自然排尿型新膀胱*
小腸を使って、膀胱の変わりになる新しい袋をつくり、その袋に尿管、尿道をつなぎなおします。尿意はないのですが、腹圧で排尿可能となります。
前立腺癌
PSA(前立腺特異抗原)検診が普及するとともに早い段階で見つかるようになったがんです。手術、放射線、内分泌療法、PSA監視療法などの治療選択肢があります。患者さんの年齢、がんの悪性度、病気の進み具合および希望から納得のいく治療法を決めています。
手術療法
前立腺全摘除術
当院では下腹部を切って手術(開腹)を行っています。ロボット支援下の腹腔鏡下手術を希望される方は、山口大学か徳山中央病院を紹介しています。
放射線治療
外照射 体の外から放射線を当てる治療で、強度変調放射線治療(IMRT)を選ばれる方は、山口大学やセントヒル病院を紹介しています。
小線源療法 放射線を出す小さな線源を前立腺内に埋め込み、前立腺内部から放射線照射する治療法です。県内では、済生会下関病院を紹介しています。
内分泌療法
前立腺がんは、男性ホルモンのある環境下で増殖する性質があります。男性ホルモンを枯渇する環境を作ってがんの発育を妨げます。外科的去勢術(精巣摘除)と内科的去勢(注射)があり、これらにアンチアンドロゲン剤を併用することがあります。
PSA監視療法
すぐに治療を行わなくても、命にあまり影響を与えないと考えられるおとなしいがんを経過観察しながら過剰な治療を行わない治療法です。PSAを監視しながら1年後には必ず再度前立腺生検を行い、病気進行と考えられたときに治療を行います。
泌尿器科良性疾患
前立腺肥大症
中高年以降の男性特有の病気で、膀胱の下にある前立腺が大きくなり尿が出にくくなります。症状が軽度な方は、尿の出口の緊張を緩める薬や前立腺を小さくする薬で治療されます。しかし、尿が出なくなったり、残尿が多く症状が強い方には、手術が施行されます。2006年よりホルミウムレーザーによる前立腺核出術(HoLEP)を行っています。標準術式であった経尿道的前立腺切除術(TURP)よりも出血および術後の疼痛が少なく、体の負担が軽減しました。さらに100mlを超える前立腺に対しても安全に施行可能です。
尿路結石
尿路結石の中で、とりわけ尿管結石は突然おこる激しい背部痛・側腹部〜下腹部痛、血尿などを伴い、救急部受診の多い疾患です。自然排石できない大きな結石は一般に、手術が必要となります。低侵襲な体外衝撃波結石砕石術(ESWL)で治療難渋が予想される結石に対して、尿道から内視鏡を挿入しホルミウムレーザーを用いた腎尿管結石の治療(f-TUL)を積極的行っています。サンゴ状結石などの大きなものには、背中から穴をあけて結石を砕き摘出します。結石の状況および希望から納得のいく治療法を決めています。
腎疾患
慢性腎不全
腎機能が悪化し、内科的治療でコントロール困難な末期腎不全となった方が紹介されています。生活習慣や希望などを考慮し、腎代替療法として血液透析(HD)や腹膜透析(CAPD)を導入しています。腎移植の希望のある方は、山口大学に紹介しています。
腎炎・ネフローゼ
専門の腎臓内科でないため、軽い病状の方を診療しています。腎生検を行い、診断確定した後、ステロイド、シクロスポリンなどを用い治療しています。