病理診断科
「病理診断科って何?私たちとどんな関係があるの?」と疑問に思われる方も多いと思いますので、ここではなるべく分かりやすく説明してみたいと思います。
主な業務である病理診断とは、一言で言うと、「採取された検体の良悪性や組織型などを調べる検査」と言えます。専門資格を持つ病理医や細胞検査士が、顕微鏡で観察し診断を行います。
これだけでは何のことか分からない方も多いと思いますので、一つ例を挙げてみます。「なんでも鑑定団」というテレビ番組をご存知でしょうか?ある物の価値を知りたい場合、その分野の専門家が目でみて、その物についての真偽と価値を判断していきます。専門家について求められるのは、その分野における深い知識とそして何より真贋をひと目で見分けられる確かな目です。これは、病理医が実際に行っている病理診断とよく似ています。病理医が「診(み)る」のは患者さんから取られてきた組織で、判断することは「癌なのか良性腫瘍なのか、非腫瘍性病変なのかなど」です。鑑定士と同じように「目利き」であることが求められますが、鑑定士が分野毎に専門性が分かれているのとは違い、病理医は一人で全身の組織を診る必要があり、またその判断は患者さんやご家族に大きな影響を与える大変重いものとなります。
馴染みが薄いかも知れませんが、内視鏡や手術で採取された組織、尿や経腟的に採取された細胞などは病理検査室で標本が作製され、組織診や細胞診が行われ、臨床医に報告されています。
全ての病気の診断に病理診断が必要な訳ではありませんが、癌の診断など、良悪性や組織型について知りたい場合には、直接組織を採取して判断する病理診断が特に重要になります。そして病理診断は最終診断となることが多く、それに基づいてその後の治療方針が決定されます。
具体的に胃の生検についてみていきましょう。内視鏡で胃カメラの検査をしたときに、実際に組織をつまんでくる(これを生検といいます)ことがあります。病理医はその組織片が良性なのか悪性なのか、そして腸上皮化生や炎症所見の有無等について、顕微鏡でみて判断していきます。必要に応じて免疫染色や特殊染色を行います。
病理診断は血液の成分を調べる生化学検査などと違い、機械にいれると自動で結果が出てくる検査ではなく、一例一例顕微鏡でみて報告書を書いていきます。言わば手作り、オーダーメイドの検査であり、そのためある程度時間が掛かります。
病理診断には全身の病気についての広い知識とともに経験が必要とされ、医師が行う「医行為」であると明確に規定されています。臨床医のみの判断ではなく、病理医の客観的な判断を入れることで、病気について多角的にみることができる点も重要な点です。
このように、みなさんを支える医療チームの一翼を担うのが病理診断科であり、山口県立総合医療センターの質の高い医療を陰で支えています。
卒後臨床研修初期プログラム
全国的に病理医は非常に不足しており、若手医師の育成が急務となっています。当院には、全国的にも珍しい「病理診断科と検査部が一体となった卒後臨床研修初期プログラム」があり、エコーや血液検査など検査部で研修を行いながら、病理診断科でも研修が行えるようになっています。山口大学が中心となり、山口県の多くの施設で研修を行える「病理専門研修プログラム」の一端も担っています。どの臨床科へ進む場合でも、病理で研修を行うことは有意義であると確信が持てます。