人工関節センター
ご挨拶
平成22年1月に山口県立総合医療センター整形外科に県内初の人工関節センターを設立しました。 当院は、弓削名誉院長により日本で最も早くセメントレス人工股関節を取り入れた病院として全国的にも有名で、この分野ではひとつの歴史に残る病院です。
人工関節(股・膝)の手術件数は、中・四国エリアでは1位で全国のランキングでも上位に位置します。
また、手術は小さく丁寧な展開、小出血、短時間で効率よくといった低侵襲を目指すとともに、安全かつ正確の為に常に工夫して改善を行い質の向上に努めています。その最たるものとして2020年11月にZimmer社のROSA、2021年3月にStryker社のMAKOの2台の最先端の手術支援ロボットを購入して現在手術対応可能な症例の大部分に使用しているところです。国内でも2台のRobotを導入している施設は当院以外1施設です。
地方ではありますが、都会の第一線どころか世界のトップレベルにそん色のない診療の質の担保と最先端でかつ安全で良質な医療の提供を心掛けています。
人工関節センター長 椎木 栄一
診療の特徴・特色
正確で安全かつ低侵襲な手術
最近の人工関節テクノロジーの進歩は目覚ましく、インプラントの耐久性が格段に向上しており、人工関節の耐用年数は20年~30年といわれています。この長期の耐久性を保つためには正確な手術が重要であり、当センターではコンピューター・シミュレーションによる術前計画を行った上で、最先端手術支援ロボットを導入して多くの手術を行っています(現段階では膝、7月から股関節も一部)。
安全な手術環境
人工関節手術ではクリーンルームを使用しています。術者も滅菌されたヘルメットつきガウンを使用することにより、手術野を最大限に清潔に保つことが出来、術後の感染の予防に努めています。
術後の肺血栓症の予防のため、抗凝固剤の投与および術後の早期リハビリテーションの開始により早期の社会復帰を図っています。
最小侵襲手術(MIS:Minimum Invasive Surgery)
膝関節と股関節の人工関節手術は、基本的にMIS(最小侵襲手術)という方法で行っており、傷が小さいだけでなく、術後の回復も早く、リハビリもスムーズに進められるのが特徴です。
人工股関節は前方進入法によるMISで行っています。この方法は技術を要しますが、筋肉を切らない方法で手術を行っていますので、脱臼の心配がほとんどなく、術人工関節には様々な関節の手術があります。股関節、膝関節、足関節、肩関節、肘関節、手指関節と分野が多岐にありますが、当院ではいずれの部位の手術も適応と理解があれば行っています。特に股関節(THA)と膝(TKA)については県内全域にとどまらず、県外からも15%の患者さんが来院されています。THAにつきましては、約8㎝の皮膚切開で筋肉を切開しないで行うDAA法を10年以上前から行って2,000症例を超える実績があります。最近では術後10日間から2週間以内に自宅退院される方が多く、退院後は生活の制限も特には行っていません。術後の患者さんの中にはゴルフやテニスなどのスポーツを楽しんでいる方もいらっしゃいます。
患者さんの状態に合わせた治療
両方の関節の手術が必要な患者さんに対しては、希望されれば一度の入院で済むように両側同時手術も行っています。手術及びリハビリテーションが同時に一度で済むため、患者さんの満足度も高いようです。また、変形が強い症例や再置換例など、かなり難易度の高い症例の紹介も多く、多数の経験があります。
早期リハビリテーションの実施
人工関節置換術では、術後早期からのリハビリテーションが重要です。当院では、県下有数の早期を中心としたリハビリテーション科(リハビリ専門医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)を配置し、専門スタッフによる早期在宅復帰を目指したリハビリを行っています。
通常は股関節で2週間、膝関節は3週間程で自宅退院されますが、回復が遅れた患者さんは院内に併設された地域包括ケア病棟へ転棟してリハビリを継続することができます。高齢な患者さんでは、当院のソーシャルワーカー(SW)が窓口となって転院の調整を行い、安心してトータルでの治療が可能となっています。
上肢の人工関節手術
また当センターでは、最近日本に導入された反転設置型人工肩関節(リバース型人工肩関節)を含めて、人工肘関節、人工指関節等の上肢の人工関節手術も行っています。
チーム医療の充実
人工関節手術を受けられる患者さんは様々な合併症を有する場合が多く、合併症に対する体制が人工関節手術を安全に行うためには非常に重要です。当院は県内トップレベルの総合病院であり、専門科へのコンサルト、充実した麻酔科スタッフなど、万全の体制で手術を受けることができます。手術を受けられる方の平均年齢は膝で70歳代半ばですが、元気な高齢者であればあるいは関節を治すことで生活の質が大きく改善するような場合、90歳を超える方も毎年数人ずつ人工関節を行っています。
これも総合病院ならではの総合力の背景があるから可能なことだと思います。