中央放射線部

概要

放射線治療とは、放射線を目的部位に照射しDNAレベルで細胞に障害をあたえ、腫瘍などを縮小死滅させる治療法です。放射線は腫瘍細胞にも正常細胞にも障害を与えますが、ほとんどの正常細胞は腫瘍細胞より放射線に対して耐性があるので適正な線量を与えることにより放射線障害から回復していくことができます。この差を利用して腫瘍細胞のみを攻撃していくわけです。

放射線治療には、外照射と内照射があります。

  • 外照射…体の外から放射線を照射する方法
  • 内照射…放射線を放出する小さな線源を標的組織付近に挿入し、体の中から放射線を照射する方法

放射線治療は体を切ることなく治療することができます。手術では傷跡が残り、体の機能や形態が失われることがありますが放射線治療ではそのようなことはありません。また、身体への負担が少ない治療法なので手術が受けられない方や御高齢の方でも治療可能な場合が多いと言えます。
 

設備紹介

放射線治療装置 リニアック(Elekta社製Versa HD)

放射線治療装置 リニアック(Elekta社製Versa HD)

外照射を行うための装置です。放射線治療において、放射線を体内の腫瘍に正確に照射することは非常に重要です。当院では、治療の精度を保つため、体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst)、3D撮影機能(XVI<X-ray Volume imaging>)、放射線治療装置と同室に設置してあるCT(同室CTシステム)、超音波を使用した遠隔照射式治療用輪郭探知システム(Clarity)などを照合装置として用い、毎日のセットアップや治療している間の体動を監視し、確実に照射されていることを確認しながら、日々の照射を行っております。また、レーザーセンサ型呼吸同期システム(安西メディカル社製呼吸同期システムAZ-733VI)や体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst)を使用して、呼吸によって変化する胸壁や腹壁の動きを検出しながら、呼吸によって動く腫瘍に対してより正確に照射を行うことができます。このように、3次元的あるいは呼吸を加味した4次元的な照合でより正確に腫瘍を照射することできるようになることで、照射範囲を小さくし、正常組織への障害をより少なくすることを試みています。

体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst)

体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst)

光学式プロジェクションとカメラシステムにより体表面の輪郭をリアルタイムにスキャンすることができますので、被ばくすることなく、毎日のセットアップや治療中の体動をリアルタイムで監視することができます。

同室CTシステム

同室CTシステム

3D撮影機能(XVI)で取得される三次元画像は通常のCTと比べて画質が劣るため、腫瘍の位置などを正確に把握して放射線治療を行う場合には、通常のCTを用いてセッティングを行ったほうがより正確となります。腫瘍のみに高線量で照射を行う場合や正常な組織にできる限り照射したくない場合などで使用しています。

超音波を使用した遠隔照射式治療用輪郭探知システム(Clarity)

超音波を使用した遠隔照射式治療用輪郭探知システム(Clarity)

治療計画時に超音波画像を用いて腫瘍の輪郭を抽出し、日々の放射線治療のセッティングや放射線治療中の動きをリアルタイムに監視することができます。また、超音波を使用することで、通常セッティングに必要な放射線の被ばくを軽減することができます。主に、前立腺癌の治療に用いています。

レーザーセンサ型の呼吸同期システム(安西メディカル社製呼吸同期システムAZ-733VI)

レーザーセンサ型の呼吸同期システム(安西メディカル社製呼吸同期システムAZ-733VI)

呼吸性変動を伴う腫瘍へ放射線治療を行う場合、呼吸性変動を加味し、余裕をもった照射範囲を設定して行うことが一般的ですが、呼吸の動きを検出することで、呼吸に同期させた放射線治療(呼吸同期照射)を行うことができます。この装置は、呼吸によって変動する胸壁や腹壁の動きをレーザーセンサで検出し、呼吸の波形を取得します。呼吸同期照射を行うことにより、照射範囲を小さくするこが可能となり、正常な組織への無駄な放射線照射を軽減することができます。

脳定位放射線治療(ラジオサージェリー)

脳定位放射線治療(ラジオサージェリー)

当院では、通常のリニアック装置に外装着式マルチリーフコリメータ(Apex)を装着し、腫瘍の形状に合わせて2.5mm幅で高解像度の照射野を作成し、多方向から正確に線量照射を行うラジオサージェリーを行っています。治療部位をリニアックの回転中心に置き、回転しながら放射線を照射していきますので、治療部位には十分放射線をあてることができる一方その他の正常な部分には分散して放射線があたりますので狙った領域のみを治療していくことが可能です。また、位置精度の保持に、3D撮影機能(XVI<X-ray Volume imaging>)を用いた照合や体表面光学式トラッキングシステム(Catalyst)を用いて照射中における体表面のリアルタイム監視を行い、より正確に照射できるシステムを採用しています。実際の治療は1回約1時間の治療を1~3日程度行い、短い期間で完遂することができます。当院では脳神経外科と協力し頭部の腫瘍を主として治療を行っております。

RALS(Remote After Loading System, 高線量率腔内照射装置)同室CTシステム

RALS同室CTシステム
RALS同室CTシステム

内照射を行うための装置です。この装置から放射線を放出する小さな線源(イリジウム 192ペレット線源)を送り出し腫瘍付近に10分前後停留させ、高線量の放射線を近距離から照射します。接近した状態なので目的部位に対し集中的に多くの線量を照射する事ができると同時に目的部位以外にはそれほど線量が照射されないため有効です。また、同室に設置してあるCT装置によって腫瘍や正常組織への放射線の影響を三次元的に把握できます。当院では婦人科と協力して子宮頸がんの治療を行っております。